法話

新年を迎え

 我が国では新年を迎えますと、初詣(はつもうで)をするという習慣が古くからございます。初詣とは新年を迎えて、その年に初めて神社や寺院または教会などに参拝して、新たな年の無事と平安を祈る行事です。大きな寺社などでは、多くの人達が競うようにしてお賽銭をあげ、もみくちゃになりながらお参りされている様子が、毎年テレビなどでよく見られます。私が住持する寺ではそのような事は無く、毎年静かなお正月を過ごしております。しかし最近は、山内にある納骨堂にお参りされる方の姿が多く見られるようになりました。新たな年を迎え、まずはご先祖様に対してお供物を供え、掌を合わせてお参りをされます。

 先日、私が檀家さんのお宅に月命日のお参りに伺った時のことでした。読経を終えた後にお茶を頂きながらお話をしておりますと、境内にある棗(なつめ)の木の話題になりました。この棗の木は納骨堂の手前にあり、写真のようにちょうど納骨堂へ向かう参道の門のようにそびえ立っております。この木はかなりの老木ですが、毎年夏になると今でもたくさんの実が生ります。その檀家さんは、「いつも納骨堂にお参りに行く時は、棗の木の下を通る時に頭を下げます。ご先祖様に対して頭を下げ、敬いなさいということなのでしょうか。」とお尋ねになりました。納骨堂へお参りに来られた方は必ずこの木の下を通ることになりますが、地面から木までの高さが170センチ弱なので、身長170センチの私などがそこを通る時は、頭を少し下げてくぐるような姿になります。この檀家さんの話を聞いた時に、私はちょっと恥ずかしいような気持ちになりました。毎日何回も棗の木の下を行き来していた私は、今までそのように考えたことはありませんでした。ただ頭をぶつけないように気を付けていたというのが本音です。

 新たな年を迎え初詣をすることもよいのですが、それとともに自宅の仏壇やお墓・納骨堂へのお参りも大切なことであります。如来様、そして御先祖様に対して、昨年一年間の御報告を致し ます。そして現今の幸せに対して感謝の気持ちを捧げ、今年一年間の更なる向上を誓いたいものであります。

平成20年1月
西山浄土宗西部青年僧の会HPにて掲載

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